理事長ご挨拶

この度,一般社団法人日本乳腺甲状腺超音波医学会理事長を拝命致しました.本学会は, 1998年に植野映先生(初代会長)が設立された“日本乳腺甲状腺超音波診断会議”が母体となり, 2012年には“特定非営利活動法人日本乳腺甲状腺超音波医学会”に,2019年には“一般社団法人日本乳腺甲状腺超音波医学会”へと発展を遂げてきました.諸先輩方の御功績により,日本のみならず世界の乳腺,甲状腺,体表臓器における超音波医学の旗振り役を担い,オピニオンリーダの集う学会として揺るぎないポジションを確立しています.
 一方では新型コロナウイルスによる未曽有の感染症が,一般社団法人化して間もない時期に,瞬く間に全世界に拡散し,医療界を含め多方面で暗い影を落としました.既に 1年半が経過しているのにもかかわらず,先行きが見通せない不安定な状況が続いています.医療現場で働いている会員の皆さまにおかれましては,感染対策や制限された検査,診療下で未だ緊張感の続く状況にあることと拝察致しますが,心よりご自愛のほどお祈り申し上げます.
 この影響で学会活動も制限され,皆さまには大変ご不便をおかけしていますが, 2021年度後半には日本社会における経済活動や日常生活が回復することを期待しつつ,本学会においても従来通りの活発な活動が再開できますように様々な角度から支援していきたいと思います.
 ところで, 2020年12月には JABTS主導の初の認定制度として,甲状腺の超音波ガイド下穿刺診断にあたる高度かつ専門的な知識と診療技能を有する医師やそれを補助するコーディネーターの教育・育成および認定のために“甲状腺超音波ガイド下穿刺診断専門資格認定委員会”が発足しました.全国の医療施設における甲状腺領域の穿刺手技・診断の普及や安全な運用および学会員拡大のために大きな役割を果たしていくものと確信致します.
 さて近年,医業の細分化や分業が進み,医師自らが探触子を握って超音波検査をする機会が激減しており,当分野の医学,研究の発展のためには経験豊富な医師の参加は必要であり,超音波専門医の育成は喫緊の課題と考えます.関連学会である公益社団法人日本超音波医学会とも連携し,将来を嘱望する若手医師に積極的に声をかけ,ハンズオンセミナーや教育講演に気軽にご参加いただき,専門医取得へとつながるように働きかけていきたいと思います.
 本学会の特色でもある「研究部会」は新規研究開発事業費の助成制度であり,これまでに多くの素晴らしい成果が,学会誌に原著論文として掲載され,日本のみならず世界の学術集会(WFUMB他)で発表されています.また『乳房超音波診断ガイドライン』『甲状腺超音波診断ガイドブック』をはじめとするバイブル的な専門書発刊や様々な超音波診断基準の作成にも携わるなど超音波医学に大いに貢献しており,これからも引き続き本制度を適切に運営し,推進して参ります.
 本学会の発展には,乳腺,甲状腺,体表領域の医師,検査技師,理工学系や技術系ほかすべての会員の皆さまのご理解やご協力が必要であり,これから 2年間一生懸命取り組む所存ですので,何卒ご指導,ご鞭撻のほどお願い申し上げます.

日本乳腺甲状腺超音波医学会理事長
自治医科大学附属さいたま医療センター
総合医学第1講座(臨床検査部)
尾本 きよか